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▲小国杉と漆喰を使ったHOKUTOの自然素材住宅
『終の住まい』 |
マイホームは、多くの人にとって、人生で一番大きな買い物になるかと思います。新築を建てるにしろ中古住宅を購入するにしろ、失敗したくないのは当然です。どれだけ慎重に検討しても、慎重し過ぎるに越したことはないかと思います。
現在土地をお持ちでない方は、中古住宅で程度の良い物件を探すというのは現実的な選択肢であると思います。しかし、土地をお持ちで、新築しか考えていないという方にも、当社では中古住宅を見ることをおすすめしています。
一般的には、新築を検討されている方は住宅展示場や新築見学会などを数社見てまわり、建築する会社を決める事が多いようです。その会社が建てた真新しい家しか見に行かれないことが殆どです。住宅展示場には建築の専門家というより売る為のプロである営業マンが常駐していますから、実際に建物を見るという事よりも営業マンの話を聞きながら営業マンの人となりで決めてしまうような事も少なからずあるようです。担当した営業マンが親切だったから、感じが良かったから、そういった理由で、家を建てる会社を決めてしまう方が意外と多いことに、大変疑問を感じます。大きな買い物だから、窓口になる営業マンには、信頼できる人に担当してほしい、そう思われるのも無理のないことです。ですが、家づくりに対する情熱とかノウハウがその会社にはあるのか、そもそも家づくりに対する考え方はどのようなものなのか、そのような家づくりの根幹ともいえることを、おざなりにしているのは業者側だけでなく消費者側でもあると感じざるを得ません。
新築を考えている方にも中古住宅を見に行くことをおすすめしているのは、建てられた時は誰かの夢の新築だった住宅が、経年劣化でどのような状態になるのかを見てほしいからです。中古住宅を見ることの一番の利点は、色々なハウスメーカーの営業マンは良いことしか言いませんが、そのハウスメーカーが作った家が10年後、20年後どうなっているかを、中古住宅は正直に教えてくれるという点です。
非常に程度のいい中古住宅もあれば、ちょっとひどいなという物件もあるわけです。ピカピカの展示場を見るのとは全く違う勉強になることが多いのが、中古住宅めぐりです。新築を考えている方にとっては、新築づくりに大変多くの参考になることがあると考えています。
中古住宅は実際の間取りや内装なども、見ることができます。住宅展示場はかなり高額な坪単価で建てられていますから、現実に消費者が新築を契約するときには展示場のような家にはなかなかなりません。住宅展示場では間取りも内装も大変贅沢に建てられている事を念頭に置いていた方がよいでしょう。
更に、展示場の住宅の屋根裏を見ることはなかなかできませんが、中古住宅であれば屋根裏のような場所も見ることができる場合があります。こういう形状の屋根は意外と雨漏りしやすいんだな…などが、見ているうちにわかってくることがあります。立派なハウスメーカーの築10年未満の住宅の屋根裏に、雨漏りの跡があることなどはよくある話ですが、こういったことは新築見学会や住宅展示場めぐりでは知り得ないことです。
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▲一階屋根の天井裏に雨漏りの痕跡と、バケツとブルーシートによる応急処置の跡がありました。 |
実際にあったケースですが、中古住宅を購入された数年のち、雨漏りがし始めて、屋根裏に上がってみたらブルーシートが敷かれ、至る所に雨水をうけるバケツが置かれていたというお宅がありました。このお宅は、購入の際には前の持ち主からも仲介した不動産業者からも雨漏りの事は一切知らされていなかったそうでした。部屋の内部からはわからないように、天井も壁も内装を綺麗にやりかえた状態であった為、入居した後に雨漏りがひどくなるまで気づかなかったそうです。
お客様からご相談をうけて私も実際に調査のため現地に伺いましたが、お客様が気づくよりもずっと以前から雨漏りがあった事は明白でした。雨漏りは、目に見える生活空間に到達するまでに何年も時間がかかることがあります。明らかに瑕疵のある物件の、瑕疵を伝えずに(というより故意に隠して)契約していますから、これは随分と悪質なケースと言ってよいでしょう。もちろん購入したお客様には何の落ち度もありませんが、購入の前に屋根裏にあがる、もしくは天袋からでものぞいてみるなど、契約前に一度でも屋根裏を確認していたら防げていた話かも知れませんので、大変残念に思います。天袋からのぞくだけでも、なにか様子かおかしいなとか、屋根裏なんかにあるはずのないバケツが見えたり、雨漏りがあれば、それなりの形跡を見つけることができます。このように中古住宅には、瑕疵が目に見えるという利点があります。
新築を検討されている方も、中古住宅をみていくことで、新築住宅に対する見方も少し変わっていくのかな、という気がします。
★久長アナ「具体的に、どんな風に見方が変わっていくと思われますか?」
住宅展示場で見る事ができないのは、10年後のその家です。実際にタイムマシーンに乗って、ご自分で建てた新築の10年後、20年後を見にいくことはできません。しかしそれに近いことが中古住宅を見ることでできるわけです。実際に中古住宅を見て、「うわ、こんな風になっちゃうんだ、話が違うぞ」というのはよくある事です。
★久長アナ「それもそうですね。新築で展示されているものは、一番綺麗な状態ですよね」
そうですね。新築見学会や住宅展示場ばかりをまわっている方は、ピカピカの新築を沢山まわっているうちに、経年劣化などない事のように錯覚してしまいがちです。しかし全ての物質は、スピードや程度に差こそあれ必ず経年により劣化していきます。また、ひと昔前に流行って、日本の気候風土に合わない木や建材を使用した住宅などは、もともとその建材が使われている国では起こらないような酷い劣化状態になることがあります。
例えば南欧プロヴァンス風住宅などが、一昔前に流行しましたが、軒の出の全くない住宅がほとんどでした。雨の多い日本で軒の出がないということは、窓や玄関など開口部の雨仕舞に大変不安があります。案の定、乾燥したヨーロッパでは見られない傷み・劣化が顕れているケースが大変多く見られます。
新築の時はおしゃれで目を引く住宅が、数年で目も当てられない外観になってしまう。これは、新しい建材や流行のものに対して何の検証もなしに、売れるからという理由で飛びつく業界の問題に他なりません。しかし、消費者の側にも安易に流行に飛びつかないという注意が必要です。見た目に劣化しているということが、必ずしも内部や土台の劣化とイコールではありませんが、少なくともそういった建材が日本の気候を数年経過するとどのような状態になるかという結果を見ておいて損はありません。
そういった意味で、いま流行のもの、綺麗に見えるものも、数年経過するとどうなるだろうという見方が養われていくという利点があり、新築だけを念頭に置かれている方にも中古住宅めぐりをおすすめしているわけです。ハウスメーカーの勧めるままに受け身で住宅を建てるのではなく、ご自分の見聞でもって、新築づくりに主体的に取り組むことに役立つはずです。
ご自分が建てたいと考えている住宅に近い中古住宅や、ご自分が頼もうと思われているハウスメーカーの中古住宅を見に行くと、なお良いと思います。同じメーカーの同じランクの住宅でも、当たり外れなどかなりの差があることもわかります。その当たり外れの原因は何なのかという事も考えてみると、今度は立地などが関係していることもわかってきます。
不動産屋さん、建築屋さんは、売りたいが為に、つい良いことばかり言ってしまうのが心情ですから、売る側の情報を鵜呑みにはしないことです。よくわからない時は納得のいくまで業者さんに質問しましょう。こんなところまで見てもいいの?という場所も、見ておくことをお勧めします。
もうひとつの手として、我々のような、信頼できるプロを連れて行くというのも、有効です。売り主でも仲介業でもない第三者としてのアドバイスができます。
当社でも購入前に検討中の中古住宅を一緒に見に行ってほしいというご依頼をたくさんいただきます。こういったご相談を受けた場合は、私が一緒に見学に伺っています。もちろん無料でご一緒しています。そういった機会にも、お客様には見るべきポイントを細かくお伝えしています。
★久長アナ「建物および土地の選び方で失敗しない方法のポイントは、まだまだ教えていただけることがありそうですので、次回に続きます!」
⇒⇒次の Vol.9『土地探しのポイント、中古物件めぐりの効能A』を読む |