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▲塗料不適合による不具合を起こしている瓦。塗装で美しく蘇りました。 |
まず「同じ屋根面積の場合どのくらい料金が違うか」という質問ですが、個別にその現場を見てみないことには一概にお答えしにくいのですが、一般的には葺き替え工事の方が高く、塗装工事の倍くらいすることが多いのではないかと思います。
この質問も、当社では年間100件以上は聞かれるくらい多くいただく質問です。ところが、どこに聞くかで答えが全く違ってくる質問でもあります。瓦屋さんに聞くか、塗装屋さんに聞くかで得られる答えが逆になってしまうのです。
それというのも現場の状況がどうであれ、塗装屋さんは塗装を勧め、瓦屋さんは葺き替えを勧め、どちらも施工するリフォーム会社は金額の高い葺き替えを勧めるというのが現実のようです。しかし、わかりきったことですが、これはとても良くないことですし、これでは消費者の方も迷ってしまうと思います。
瓦屋さんやリフォーム会社に相談すれば、葺き替えなくてもよい程度の良い瓦を葺き替えてしまうことになりますし、逆に塗装屋さんに相談すれば、たとえ葺き替えなくてはならない状態の瓦でも、塗装で大丈夫ということになってしまいます。
当社では、意外に難しく考えることはありません。屋根の劣化状況などを精査して、塗装のメンテナンスで充分な瓦には塗装をお勧めし、葺き替えが必要な瓦であれば葺き替えをお勧めしています。当たり前のことですが、この業界は当たり前ではない会社が多く、自分が儲かる方を勧める会社がほとんどですので注意が必要です。
屋根の劣化状況を精査した結果、屋根の下地が傷んでいれば当社では葺き替えを勧めています。塗装をして瓦がきれいになっても、下地が傷んでいれば雨漏りの原因にもなってしまいます。傷んだ下地をやり替える場合、瓦を一回降ろさなくてはいけません。降ろしてまた載せるという作業は、手間がかかり破損などのロスも大きく生じます。ですから、どのみち手間をかけて瓦を降ろすのであれば、古い瓦を載せるよりはこの際新しい瓦を載せた方がよいのでは?と葺き替えをご提案することが多いです。
逆に下地が傷んでいない場合は瓦を降ろす必要もありませんから、瓦の状況が塗装でメンテナンスできる状態であれば「塗装で大丈夫でしょう」という答えになってきます。
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▲雨漏りの痕跡のある一階屋根裏。屋根勾配が小さい住宅でした。 |
屋根の傷みですが、実は屋根勾配というものが傷みに大きく関係してきます。屋根勾配が小さい住宅に、屋根材や下地が特に傷んでいるというケースが非常に多いのです。
一般的な屋根勾配は「4寸勾配」と言います。水平線上に10進んだら、垂直に4立ち上がる比率で傾きをつけることを4寸勾配という言い方をしますが、この4寸勾配は屋根の最低の勾配です。5寸勾配であれば、水平線上に10進んだら垂直に5立ち上がるということで、この4寸とか5寸という数字が大きくなるほど勾配は大きく屋根の傾斜は急になり、逆に数字が小さくなるほど勾配が小さく屋根の傾斜は緩やかになる、ということになります。
最近の住宅では、屋根勾配が小さい住宅が大変増えており、そのために屋根の傷みが早く、そして激しくなっている傾向にあります。
屋根勾配が小さい住宅が増えている背景には、屋根に勾配をつけないことで屋根材を軽くすることができるということで、耐震上のメリットとして普及しているようです。しかし、当社では、住宅の保ちから見ても屋根勾配はあったほうが良いと考えています。なぜなら、住宅の耐久年数が格段に良くなるからです。
★久長アナ「ここで、関連してもう一つ質問をいただきました。訪問販売業者から、耐震性能を上げるために、屋根を軽い物に葺き替えしたほうが良いと勧められました。地震の時は、屋根が重たいと倒壊の危険が高いと言われて心配になりました。確かに耐震は気になりますが、なんだか業者に不安を煽られているようで、契約に踏み切れません。アドバイスをお願いします。」
基本的に、耐震上の観点から屋根は軽くしたほうがいいというのは、その通りです。しかし、屋根勾配を小さくするという方法で屋根を軽くすると、その反面リスクとして屋根の傷みが激しくなります。耐震性能は高くても雨漏りする家というのはどうでしょうか。雨水の浸入は、構造体も含めた住宅すべてを傷める原因になりますから、これは耐震か雨漏りかどちらかを選ぶような話ではないですね。
新築を売る場合、建物の価格は面積で売ります。坪単価や、u単価がいくらであるとかで建物の価格を決めますが、体積はその価格に反映されません。同じ面積でも、屋根勾配を大きくすると小屋裏の体積が増えます。そうすると屋根材も増えるため、材料費が上がってしまいます。しかし材料費が増えても、面積自体は変わらないので単価を上げることができません。業者としては少しでも安く建てたいので、屋根勾配の小さい家を建ててしまうというわけです。
このように、材料費をかけないで建てようとすると、屋根勾配の小さい家ができあがります。こういった業者の都合で、昨今屋根勾配の小さい家が増えてきています。そこに、聞こえのよい耐震上という理由をとってつけているという現状なのです。
長年住宅を見てきた私から言わせていただくと、屋根が軽いか重たいかよりも、屋根勾配がきちんと4寸勾配以上ある住宅のほうが長保ちしているという事実も確かなのです。
★久長アナ「では、今回のポイントはどのようなものでしょうか?」
現実に、今住んでいる家の屋根勾配がどのくらいあるかがポイントになると思います。勾配がある屋根の場合は、塗装でOKのケースがほとんどです。なおかつ、もし今仮に雨漏りをしていたとしても、応急処置で雨漏りが軽減される、もしくは全く無くなるというケースが多いです。逆に勾配が小さい屋根の場合は、葺き替えも含めて検討する必要があるかと思います。
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