当社にじが丘本店にS様からお電話をいただきました。初めは植栽の剪定ということで現地調査にお伺いしました。いろいろお庭やお家の悩みを伺っていた所、外壁のお話しになり、目地を3〜4年ほど前にやり替えたが少し見てほしいとの事でご相談をいただきました。調査した所、剥がれやひどい箇所はバックアップ材が露出した状態でした。
施工前 |
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←3〜4年で既に割れてしまっている目地。紫外線による劣化でサイディングも割れてしまっている。 |
以前、施工したのは訪問販売系の業者で、屋根塗装と外壁の目地のみのやり替えを勧められて施工したそうです。しかし施工後2年目あたりからこの様な状態になったとの事でした。訪問販売業者は「外壁の目地が傷んでいます。目地だけでもやり替えませんか。」と、目地を剥ぎ取って打ち直す施工を勧めることがよくあります。実際には何の意味もない施工で、業者にとっては売り上げを上げるだけの工事です。訪問販売系業者はもちろんですが、大手ハウスメーカーも同じような無意味な施工を勧めているのが現状です。住宅に携わりながらも家の事を何一つとして考えない業界の現状に強い憤りを感じます。
その場でお見積もりのご依頼をいただき、後日お見積もり説明に再度お伺い致しました。S様のお宅は、屋根が乾式洋瓦、外壁が窯業系サイディングでした。いまや新築の9割以上に使われるサイディングですが、目先の意匠性や高級感などにばかり注目が集まりがちですが、住宅に使う建材としての大きな欠陥が見落とされています。その欠陥とは1つめが「比熱が低い」ということです。
比熱とは1gあたりの物質の温度を1度上げるのに必要な熱量のことです。比熱は高くなるほど、温まりにくく、冷めにくい性質を持っています。水は地球上の物質の中で一番比熱が高いので、温まりにくく、冷めにくい物質なのです。比熱が低いほど熱の変化が生じやすい性質であるといえます。サイディングは内部に水をほとんど持っていませんから、日中の太陽熱に温められてかなりの熱をもちます。すると内部の空気が温められ湿気の多い空気が壁体内部に滞留します。では夜になるとどうでしょうか。サイディングのような比熱の低い素材の場合、温度の変化は急速に起こります。日中温められて熱を持っていたサイディングは急速に低温になり、壁体内部の水蒸気を含んだ空気が冷やされて、空気中の水蒸気は水滴となります。これを内部結露といいます。窓ガラスを見るとわかりやすいのですが、壁体内部でもあのような現象が起こっているのです。その結果、断熱材やクロスなどを濡らしてしまい、カビの原因にもなっています。これらの現象が毎日毎日、壁体内部で起こっている訳です。当然、建材そのものも急激に温まったり冷えたりするといった事を繰り返しますから、反りが出たり、割れが出たり、それに伴って目地が浮いたりするのです。
このように比熱の低いサイディングは、温度の変化による影響を大変受けやすい建材で、これが意外に知られていない最大の欠点です。 |
2つめはS様のお宅でもきっかけとなった、目地の存在です。サイディングはパネル同士に継ぎ目が生じます。通常、その継ぎ目は目地材で埋めますが、最終的な仕上げの外壁材に、継ぎ目がある事は建物として致命的な欠点といえます。シーリング材が縮んだり、割れたりするとそこが雨水の侵入経路となります。この目地に使われるシーリング材は、紫外線に大変弱く、縮みやすいという性質があり、日当りの良い南面などはたった3年ほどでボロボロに劣化する事があります。その劣化した目地を見て、訪問販売系業者は目地の交換を勧めてくるのですが、交換してもまた短期間で劣化してしまいます。(目地の交換は、その場しのぎにしかなりませんので、当社では行っていません。) |