当社ショールームに、M様よりご自宅の外壁塗装のご相談のご連絡をいただき、現地調査に伺いました。
ちょうど近隣で当社が外壁塗装工事をしており、工事の対応と仕上がりが良かったのでご連絡を下さったとの事でした。
M様邸はS社で建てられた2階建てで、屋根は陶器瓦、外壁は窯業系サイディング張りの仕上げでした。
現地調査時に確認してみると、外壁は既に破損して滑落し、継ぎ目のシーリングは剥がれていました。また、笠木も破損して滑落しており、ベランダ床の防水シートはその大部分が浮いて剥がれかけている状態でした。
M様にはまずその原因を一つ一つご説明いたしました。
軽量鉄骨構造の為、躯体にはたくさんの『鉄』が使われています。
M様邸の2階のベランダは、かなり広く設計されていました。しかしこの大きさが問題で、屋根の軒先を超えるほどの出幅でしたので、その外壁やベランダ部分は、降雨時には常に雨が当たり続けている状態でした。
サイディングや笠木は、もともと継ぎ目が出来る仕上げでしたので、その継ぎ目から雨水が多く浸入していました。浸入した雨水は、外壁の内側をつたい内部の鉄骨まで錆びさせて腐らせていました。当然のことながらサイディングを支えている下地の鉄骨は朽ちてしまうと外壁材は固定がきかなくなります。その為に外壁材が滑落したという状況でした。
サイディングの弱点である比熱が低いという事と、継ぎ目ができるという事を少しでも設計の時に考慮していれば、このような結果にならなかったのではないかと感じました。
軒を少しでも大きく出すことは、住宅の寿命を長くするという点で最も大切なことのひとつです。日本の住宅の設計で重要なのは、『雨仕舞』をしっかりすることです。
軒の出幅の大小は、外壁にあたる雨の量を左右します。近年主流となっているサイディングの壁には継ぎ目があります。その継ぎ目を埋める建材は紫外線に非常に弱く、条件によっては3年ほどで劣化します。縮みや亀裂が生じた継ぎ目からは、雨水が簡単に壁体内部に浸入し、内部の構造体を傷める原因となるのです。
日本は世界的に見ても、雨の降る量が大変多い国で、年間の降雨量は平均1600oを超えます。日本の住宅は、雨に対する備えや工夫をしてきたという歴史があり、そのための『屋根勾配』であり、『軒』なのです。
そのような、日本で住宅を建てる上では非常に重要な雨仕舞をおざなりにした新築住宅が主流となってしまった昨今では、『雨漏り』の様相が変わってしまいました。昔は雨漏りといえば経年劣化が進んだ屋根からごくまれにするものであり、例え雨漏りがあっても修繕が容易だったのが、今では根本的に解決することが非常に難しい上、新築後3年など築浅から始まり、また屋根だけでなく外壁からも生じるものとなってしまいました。その上、その根本的な原因や新築住宅の問題点を理解している業者が非常に少ないために、解決や対策が難しくなっているというのが、住宅業界の現状なのです。 |
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M様邸のベランダの防水シートはもともと接着剤で固定する仕上がりの為、接着材の寿命が切れたり、雨水の浸入もありましたので、浮いて剥がれてきている状態でした。ベランダのシートを剥がすと、雨水が浸入している下地のコンパネは腐食していました。
M様には、根本的な解決策ではないですがシート防水の弱点である『継ぎ目』をなくす工法と、傷んだ下地を取り替えるご提案を致しました。また、壊れた外壁は、撤去した後に張り替えをして、雨水が入り続けている笠木は、今後雨水が浸入しないように上から新しい板金で守る対策のご提案を致しました。
後日、お見積もりをご確認下さり、工事の発注をいただきました。
工事後は、綺麗な仕上がりをご覧になり、とても喜んで下さいました。
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