これは実際に拝見してきたのですが、本当に驚きました。何を工事したのか全くわからない状況でした。ときおりこういうご相談がありますが、非常に残念なケースです。雨漏りについてのお話しは、以前も何度かお話しましたので、今回は当社がよくご相談を受けるケースである、こういった悪質な業者についての現状をお話したいと思います。
一般的には、業者の工事力が不足していた為におこる施工不良やミスといったケースがよくあります。しかし、時折、こういった悪質なケースに出会うことがあります。現地調査に行くと、お客様からは「以前防水工事をしてもらった」とか「何年前に塗装工事をした」といったお話しを伺うのですが、調査をしてもまともな施工のあとがないのです。
今回ご相談いただいたケースでは、お客様自身が被害に遭われていることに全く気付いておらず、もう何年も付き合いのある業者だとおっしゃっていました。工事をしてもらったが雨漏りが直らない、手直しを依頼したら高額の見積もりを出され、そのような折にちょうどこの番組を聴かれたそうです。
なぜ何回もその業者に工事をしてもらっているのか、理解し難かったのですが、長いお付き合いをしていく中で、一応プロだと思っていたとの事でした。聞いたところ訪問販売業者ではなく、地元の普通の業者でした。
実際に工事の後を見たら、「こんなことをプロがやるのか?」というような驚くべきもので、「何度か防水してもらった」とお客様はおっしゃってましたが、防水工事と呼べるものは一切していませんでした。工事の痕跡は多少あり、なぜか全く理解できないのですが、壁面をはつって、その壁面の中をやり替えたりといった工事をしていたようです。ベランダの防水面は、左官屋さんが来て上からコンクリートを塗ったりしていましたが、「これは、ほんとうに左官屋さんが施工したのか?」というようなレベルの工事でした。
更に驚くことに、その業者はご丁寧に写真まで撮って施主さんに渡していました。「わかる人間は誰も見ないだろう」と思っているのでしょう。「施主さんが、写真を撮れば納得するだろう」ということで、いかにも公共工事の真似事のような写真を撮って、その写真に矢印をつけて、「こういう工事をやっているところです」というような説明を書いていました。しかし、これは逆に、もし裁判でも起こせば、詐欺の証拠となります。そう言ってしまってもいいような工事でした。
工事金額を聞いて、更にびっくりしたのですが、200万円ほど支払っておられました。工事金額の明細を見ると、例えば左官工事だけの項目は15万円。お話しを聞くと親子と言って2人来られて施工したという事でしたが、おそらく内容からして1日で終わっていると思います。通常であれば1日、2人の職人が入った場合はいいとこ3万円くらいのものです。そういったようなよくわからない工事を積み重ねて、更に無意味な施工をして、トータルで200万円ほど請求されているのです。
それだけでも大変な被害ですが、事もあろうに(というか工事を見る限り当然ですが)、それで雨漏りが止まらなかったということです。そうしたら今度は違う理由をつけて、同じような金額の見積もりを出してこられたということでした。もちろん無意味な工事ですから、何度工事しても直るわけがないのですが。
当社が依頼を受けて調査に行った時は、おそらく追加工事をやる寸前だったようです。その業者とお客様の付き合いも長いということで、どのようにお客様にお話ししていいかと私も苦労しながら、ご説明しました。
こういう事例は、悪質な訪問販売業者に限らず、実は意外に多いのですね。これは防水とか塗装という名を借りた詐欺と言ってもいいくらいです。よくある善意のある業者が技術不足で、本人も人を騙している自覚なしに不良工事をしてしまったというケースではない、自覚のある悪質なケースです。ちょっとした手抜きとか(本来はこれも許されませんが)、善意はあるが技術不足というケースとは、だいぶかけ離れている工事の一例でしたから、放送するべきかどうしようかかなり迷いました。しかし、こういったお困りのご相談は残念な事に絶えませんから、なるべく多くの方に聞いていただいて、お客様ひとりひとりが注意していただきたいと思います。
塗装や防水の見積もりを貰った場合に、ご自分やご家族が見てもよくわからないのであれば、他の会社に見てもらう手もあります。我々もお客様によく「当社から出した見積もりが納得いかなければ、他の業者にこの見積もりをお見せになって結構ですよ」と言っています。業者としても、別にそういうことはモラルに反することではないですから。他社からの説明や意見も聞いてみて、その説明に納得できるかどうかが大事なのではないでしょうか。
専門家だからといって委ねるのは、何事においてもこれは非常に危険なことです。食と住というのは、じつは素人のかたが、基礎学力があれば充分理解できることだと思っていただければ良いかなと思います。
★久長アナ:今回のご質問としては、何度か業者に頼んでお金をかけているんですが、雨漏りなどが直らないというご質問でしたが、そういった悪質な業者もあるので気を付けてくださいという注意喚起も含まれますね。ここでまた改めて言えるのが、我々は素人だからというようには考えずに、素人だからこそ、色々な質問を投げかけてみて、ちゃんと答えが返ってくるかというのを見極める。我々の力も大切ですね。
そうですね。根気よく聞くということで、「プロが全て、本当のプロかどうか?」と聞きながらもどこかで疑っていていいと思います。プロというのは、なにか建築系の資格があればいいというものでもないですから。お客様がよく納得されることが大事ではないかなと思います。おかしかったら「おかしい」と、その業者さんに言える勇気も必要ではないかと思います。
ある程度高年齢の方や、他人を信じやすい方が、多く被害に遭われている傾向にあるようです。2〜3度、そういった被害に遭われて、それでも雨漏りなどの改善が見られないので、当社にご相談に来られるといった経過をたどるケースがあとを絶ちません。雨漏り以外ですと、たとえば耐震やリフォームの場合、ご自分が被害に遭ったという自覚がないこともよくあります。
こういった悪質な業者でも、名前は「○○企画」とか「○○技研」といった立派そうな名前であったり、名刺なんかを出されると、それなりにもっともらしく見えます。その上、耳馴れない工事名や用語が並んでいる見積書を見せられたり難しい工事説明をされたらなおさら、一般の方には見極めるのは難しいかと思います。このような悪質なお金をとるためだけの工事まがいのことをされないためには、どうしたらいいか。
たとえむずかしくても、出来るだけリフォーム代金を、ものの値段を見極めるという目で見てほしいと思います。我々の施工の値段は人件費と材料費から成り立っています。それを合わせたものが原価です。その原価にいくら利益をのせていただくのが妥当かということで、お客様への請求金額が決まります。人件費は、工期が何日ぐらいで、何人の職人が入るかで変わってきます。材料費はいくらくらいなのか、職人は述べ何人入っただろうか、などに興味と関心をもっていただくだけで、被害にあいにくくなるのではないかと思います。
ちなみに一般住宅の塗装工事を例えにしますと、私が耳にした範囲では、家一軒の屋根と壁の塗装で安い業者で50万円、高い業者では壁だけで300万円というほど、業者によって値段に差があります。ところで、この高い業者は材料や工法にお金がかかっているのかというと、50万円で請け負う業者の施工とほとんど程度が変わらなかったりします。
この場合、安い業者が良いと言っているわけではありません。高いか安いかではなく、妥当な値段はいくらなのか、ということです。きちんとした真っ当な工事をした上で、妥当な利益をのせて、お客様に請求する業者であるかどうか、というところを見極めることが大事です。
★久長アナ:実際のところ、我が家を工事する場合、妥当な工事代金はいくら位なのかというのは、一般の消費者には中々わかりにくいのではないかと思いますが…。
そういった目安の金額を知る為には、何社かから相見積もりをとるのが有効です。ただ見積もりをとって比較してもよくわからないと思いますので、見積もり金額の根拠について、きちんと説明してもらうことも重要です。それぞれの見積もり説明を聞くうちに、説明の上手い下手ではなくて、見積もり内容の中身が見えてくると思います。そうすると、金額に差のあるそれぞれの見積書を比較することができてくるのではないでしょうか。
もう一つは、とにかく即決しないことです。悪質とまではいわなくとも、工事力のない業者に限って、「この地域での実績がないので、今なら限定5棟だけ、モニター価格で半額です」などといって、契約を急がせます。お客様にゆっくり検討させない、ほかの家族に相談させないような業者は、これはおかしいなと思って警戒しておくに越した事はありません。 |